目次
株のテクニカル分析とは?ファンダメンタルズ分析との違い
株のテクニカル分析とは何か、ファンダメンタルズ分析との違いやそれぞれの特徴を見ていきましょう。
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の違い
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析は、簡単にいうと、何を根拠に株の値動きを推測するかが異なります。
テクニカル分析は統計的なデータをもとに、ファンダメンタルズ分析は業績や今後の成長をもとに売買のタイミングを図る分析手法です。
分析手法の違い | テクニカル分析 | ファンダメンタルズ分析 |
---|---|---|
分析の根拠 | 統計データ | 業績や経営方針・財務状況 |
投資期間 | 短期 | 中長期 |
分析方法 | おもにチャートや相場状況を見る | おもに決算や経営計画を見る |
株価の変動は、長期的には業績に連動し、短期的には過去の取引パターンに一致する傾向があります。
テクニカル分析では、過去の取引パターンの統計から「この期間でこのくらい動く確率が高い」という根拠に基づいて売買します。
テクニカル分析は必要?
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析には大きな違いがありますが、どちらかだけで株投資がうまくいくわけではありません。
株を購入したい企業の長期的な業績を予想した後、いざ買うときにテクニカル分析を知っていると、買い時を見極めるのに役に立ちます。
また、「業績が良く株価が上昇しそうなのにテクニカル分析では過去の取引パターンと明らかに異なる動きをしている」といった場合には、慎重に注文を出せるのでリスク回避にもなります。
テクニカル分析は短期売買を行なうデイトレーダー向け
テクニカル分析は、ある程度短期間の株の値動きを見る分析手法なので、株を短期間で売買するデイトレーダーがよく使う手法です。
テクニカル分析は短期間の値動きを予測できる
テクニカル分析は、数時間後あるいは、数日、数週間後の相場を予想し、売買を判断する分析手法です。
デイトレードやスイングトレードなどの短期売買に適しています。様々なテクニカル分析を駆使して、1日中チャートを眺め、タイミングを見計らって売買するデイトレーダーも多いようです。
テクニカル分析による売買のタイミング【基礎編】
では、実際にテクニカル分析を使ってみましょう。
まずは基礎的なテクニックで売買のタイミングを見る方法です。
テクニカル分析の指標、株価チャートの種類
テクニカル分析で使用する指標には、トレンド系とオシレーター系の2種類があり、この指標によって異なる株価チャートができます。
それぞれの株価チャートを見てわかるのは大まかに、次の3つのことです。
- 株価が上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのか
- 買われ過ぎなのか、売られ過ぎなのか
- 買い時であるか売り時であるか
トレンド系
指標名 | わかること | 売買のサイン |
---|---|---|
ローソク足 | ローソク足の形:株価がどのように動いたのか/値動きの幅がどのくらいだったのか ローソク足の動き:上昇トレンドか下降トレンドか |
上昇トレンドに乗れば買い時/下降トレンドに入れば売り時 |
ボリンジャーバンド | 現在の相場で買われ過ぎか売られ過ぎか | 確率の高い値動き幅を上に外れたら買い時(上昇トレンド) |
移動平均線 | 一定の期間で平均株価がどう推移しているか | 上昇する移動平均線に現在の株価が届いたら買い時(上昇トレンド) |
一目均衡表 | 買い圧力と売り圧力どちらが優勢か | ローソク足チャートが安定して上昇し雲を上抜けたら買い時 |
オシレーター系
指標名 | わかること | 売買のサイン |
---|---|---|
RSI | ある期間の全体の値動きに対して、上昇した値動きが何%であったか | 値が高くなれば売り時、低くなれば買い時 |
RCI | 株価の上がり始め、下がり始めの時期とタイミング | RCIが100に近づくと売り、-100に近づくと、買い |
ストキャスティクス | 売られ過ぎか買われ過ぎか | %K、%D、%SDという3つの指標数値のうち、%Kが75%以上で売り時、%Kが25%以下で買い時 |
MACD | 一定期間で新しい株価の比重を重くし、より正確になるよう調整して算出した株価の平均値 | MACDラインがシグナルラインを下回ると売り時、MACDラインがシグナルラインを上回ると買い時 |
それぞれについてもう少し詳しく解説していきます。
トレンド系の株価チャートと売買のタイミング
トレンド系とは現在株価が上昇する傾向があるのか下降する傾向があるのか、その傾向がいつまでどのくらいの勢いで続くのかがわかる指標です。
- 上昇トレンド:株価が上昇傾向にある
- 下降トレンド:株価が下降傾向にある
具体的にどのように読んでいくのでしょうか。
ローソク足チャート
ローソク足チャートをみれば一定期間内に株価が上昇しているのか下降しているのかがわかります。
ローソクの形をしたローソク足は、1本で定めた単位期間内の高値、安値、始値、終値の4つの価格がわかります。
ローソク足チャートはローソク足を時系列で並べたものです。値動き、株価の変動を表します。
- 高値:期間中の高値
- 安値:期間中の安値
- 始値:相場が始まったときの価格
- 終値:相場が終わったときの価格
ローソク足は3つのパートに分かれます。
- 実体:中心の長方形の部分
- 上の線:上ヒゲ
- 下の線:下ヒゲ
実体部分は始値と終値を表し、上ヒゲの先は期間中の最高値、下ヒゲの先は最安値です。ローソク足の色で終値が始値より高くなったのか安くなったのかがわかります。
陽線 | 陰線 |
---|---|
終値>始値 | 白色もしくは赤色 |
始値>終値 | 黒色もしくは青色 |
テクニカル分析を学習し始めたばかりの人はローソク足の色をみて、陽線だったら株価が上がって終わった、陰線だったら株価が下がって終わったのだと直感でわかるようになれば十分です。
応用として、ローソク足の形を詳しく分析したり、後に説明する移動平均線との位置関係をみたりして値動きを判断する方法もあるので簡単に説明します。
- ローソク足の形から値動きを判断する方法
- 実体が長い陽線は買いのサインです。実体が長いということは始値と終値の差が大きく、株価の変動に勢いがあることを表します。株価が上昇する勢いが強いため買い時であると予測できます。
- ローソク足と移動平均線の位置関係を見て、値動きを判断する方法
- 移動平均線よりも陽線が上にあると、上昇トレンドであると予想できます。
ローソク足についてくわしくはこちらの記事へ
「株のローソク足とは?種類と見方・チャート分析の基礎を解説」
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドは、株価の上がりすぎ・下がりすぎを見極められる指標です。
移動平均線を中心に上と下に描かれている2本の線で描かれます。
上から+3σ(シグマ)、+2σ、+1σ、-1σ、-2σ、-3σと呼びます。
株価の値動きの幅に関して、下記内容を便宜的に覚えておくといいでしょう。
- 株価が+1σと-1σに幅に収まる確率:約68.2%
- 株価が+2σから-2σに収まる確率:約95.4%
上の確率を見てわかるように、値動きの幅は±2σ内に収まります。 +2σを超えたら上昇しすぎなので売り、-2σを超えたら下落しすぎなので買いと判断できる仕組みです。
σは、標準偏差を表す記号です。±2σは平均値が-2σ ~ 平均値+2σの間に収まるという意味を表します。
ボリンジャーバンドについてくわしくはこちらの記事へ
「株のボリンジャーバンドを攻略すれば株価の動きがわかる!」
移動平均線
移動平均線は初心者でも知っておきたいポピュラーな指標であり、株価の大まかなトレンドをつかめます。
移動平均線は一定期間の株価の平均値を計算して、得られた値を線で結んだグラフです。
短期の移動線と中長期の移動線があり、複数の線から今後の値動きを読みます。
ボリンジャーバンドやローソク足と組み合わせ分析する手法もあり、例えばローソク足と移動平均線の関係が「ゴールデンクロス」という状態になれば買い時という見方ができます。
これについては後で詳しく出てきます。
一目均衡表
ローソク足と5本の線で形成される表です。相場の変化を見極めるのに使用します。
5本の線を使い、精度の高い分析を行なうものですが、基準線が上向きなら上昇トレンド、下向きなら下降トレンドということだけ覚えておきましょう。
一目均衡表で使う5本の線は以下の通りです。
線の名前 | 内容 |
---|---|
基準線 | 過去26日間の株価の高値と安値の価格。右上がりのときは株価が上昇、右下がりだと株価が下落している |
転換線 | 価格のすぐ近くにある線で、過去9日間の株価の高値と安値の中間の価格をとった線。基準線の上なら買い時、下なら売り時 |
先行スパン1 | 転換線と基準線の中間の価格を26日先行してずらして表示した線 |
先行スパン2 | 過去52日間のローソク足の高値と安値の平均値を26日間分先にずらして表示した線 |
遅行スパン | その日の終値を26日間分遅らせて表示した線 |
オシレーター系の指標
オシレーター系の指標は株価の大きな流れや水準に関係なく、相場をリアルタイムでとらえ次の瞬間株価が上がるか下がるかを見極めるのに役立ちます。
トレンド系が、今後上昇あるいは下降するのか、株価の方向性がわかる指標であるのに対し、オシレーター系は、株価が上昇もしくは下落に変わるタイミングをはかる指標です。
オシレーター系の指標をいくつか紹介します。
RSI
一定期間の相場において、値上がり幅と値下がり幅を活用し、値動きの強弱を見る指標です。
RSI(%)=「値上がり幅の合計」÷「値上がり幅の合計+値下がり幅の合計」×100
「上昇した日の値幅の合計」と「値下がりした日の値幅の合計」をあわせて比率を出します。
例えば 上昇7日、下落3日なら、RSIは70%です。
50%を基準に、値が高くなれば売りサイン、値が低くなれば買いサインと判断します。
RCI
日付と価格に順位をつけ、両者の相関関係に着目した指標です。
RSI(%)=「値上がり幅の合計」÷「値上がり幅の合計+値下がり幅の合計」×100
数式だけみてもわかりにくいですが、要は、値上がりした日数が多いかどうかが判断基準です。
株価が上昇した日数が多くなると買われ過ぎで、下落の日数が多くなると売られ過ぎと判断します。
株価が上昇し続ければ100%に近づき、株価が下落し続ければ-100%に近づく仕組みです。
例えば、9日間のRCIは、9日間上昇し続けると100%、9日間下落し続けると0%となります。
ストキャスティクス
ストキャスティクスでは。%K、%D、Slow%Dという3つの数値を目安に売買のタイミングを予測します。投資判断で最も重きを置かれるのが%Dラインです。
%Kや%Dが、基準となる値動きの幅が上80%下20%である場合、80%を切ったら売り、20%を超えたら買いというふうに予測する仕組みです。
株価変動が激しい相場では、ストキャスティクスが出す売買のサインをあてにするのは危険であると言われます。
MACD
短期と長期、2種類の指数平滑移動平均を使って株価のトレンドを判断する指標です。
指数平滑移動平均は移動平均線で使用する単純移動平均より精密な計算でグラフ化されます。
過去より最近の比重が大きくなるよう算出され、移動平均線より実際の値動きに近くなる仕組みです。
株のテクニカル分析による売買のタイミング【応用編】
テクニカル分析の応用編としてトレンドの捉え方の種類や、指標を組み合わせて売買のタイミングを図る方法を説明します。
多くの投資家が利用する分析手法なので、覚えておきましょう。
トレンド系と順張り、オシレーター系と逆張り
株を買うタイミングは「順張り」と「逆張り」いずれか2種類で予測できます。
- 順張り:上昇トレンドに合わせ株を買う
- 逆張り:下降トレンドに合わせ株を買う
相場を見て株の値動きにトレンドがあればトレンド系の指標を参考にして、順張りで売買のタイミングを見極めます。
トレンドがない場合はオシレーター系を参考に、逆張りで売買のタイミングを見極めるのが主流です。
移動平均線、ゴールデンクロスとデッドクロス
トレンドが上向き、下向きに勢いよく転換していく時、ゴールデンクロスとデッドクロスという現象が生じます。
- ゴールデンクロス
- ゴールデンクロスとは短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けたとき、買い時であると判断できる現象です。交差した移動平均線はどちらも上昇し、株価は上昇トレンドに転じると予測できます。
- デッドクロス
- 中期・長期の移動平均線を短期の移動平均線が上から下へ突き抜けたときは、売り時であると判断できる現象です。株価は下降トレンドに転じると予測できます。
トレンド系とオシレーター系の使い分けと併用する方法
トレンド系とオシレーター系は使い分けや併用が大切です。トレンドとオシレーターを合わせ、タイミングを見極めましょう。
トレンド系とオシレーター系の使い分け
トレンド系とオシレーター系、どちらを使って分析するのか以下の順番で見極められます。
- トレンド系でトレンドがあるかないかを調べる
- トレンドがあったらトレンド系を使い上昇トレンドか、下降トレンドかを見る
- トレンドがない場合、またはあってももうすぐ終わりそうな場合はオシレーター系を使う
トレンド系とオシレーター系を併用する方法
トレンド系の指標とオシレーター系の指標を併用して有効な分析をするには、トレンド系で傾向をつかみつつオシレーター系で分析できるサインに注意し気を付けることです。
トレンド系で上昇トレンドを迎え買いサインが出ているのに、オシレーター系では買われ過ぎで売りのサインが出る、という現象があります。
このとき、「上昇トレンドだけれどそろそろ天をついて下降トレンドに転じるかも」という風に気を付けて買いの準備をすればリスク回避できるでしょう。
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- 1位ボリンジャーバンド
- 2位一目均衡表
- 3位指数平滑移動平均
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- 1位 MACD
- 2位 RSI
- 3位 ストキャスティクス
楽天証券の株アプリについて詳しくはこちら
「楽天証券のスマホアプリ「iSPEED」の特徴とメリットデメリット」
SBI証券の株アプリ「SBI証券株」
SBI証券の株アプリでは以下のチャートが見られます。
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SBI証券の株アプリについてくわしくはこちらの記事へ
「SBI証券のスマホアプリ「SBI証券 株」の使い方とメリットデメリット」