株の短期取引に必要なのは準備!銘柄選びや分析手法の知識と注意点

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株を短期で取り引きするのにはどんな人が向いているの?
買い時や売り時を見極めるのは難しそう…

株式投資の取り引きスパンは大きく「短期」「中期」「長期」投資というふうに区分できますが、今回は短期・中期投資について紹介します。

実際の運用方法や銘柄の選定方法などを学び、実践ですぐに使えるよう準備していきましょう。

なお、本記事では短期投資を投資期間が1日以内のデイトレード中期投資を投資期間が数日程度のスイングトレードと定義しています。

株の短期・中期投資のメリット・デメリット

短期取引、中期取引はどちらも短期間の価格変動を利用して、安くなったところで買い高くなったところで売ることを繰り返して利益を得る投資手法です。
まずは、短期取引のメリット・デメリットを見ていきましょう。

短期投資のメリット・デメリット

1日以内で取引する短期投資のメリットは以下です。

短期投資のメリット

  • 利益が出るまでのスピードが速い
  • 業績悪化や市場環境の悪化などの影響を受けにくい
  • 企業業績を長期的に見通す力が無くても取引は可能

短期投資のメリットはなんといっても、利益が出るまでのスピードが速いことです。
多くの短期投資家は、1日の間で複数回の取り引きをします。

利益の幅は投資家ごとに異なりますが、1日で10%から20%の利益を得ることも珍しくありません。

長期で株を保有しないため、業績悪化や市場環境の悪化などの影響を受けにくいことも短期投資のメリットです。

また、短期間の株価の値動きに着目するため、長期的に株価に影響を及ぼすような企業業績をしっかりと分析する力が無くても取引が可能であることも、特徴の1つです。

短期投資のデメリット

  • 損失発生時は資産の減少するスピードが速い
  • 売買の判断時間が短い
  • 頻繁な売買の度に手数料が発生する

一方でデメリットは、その取り引きの速さゆえに損失が発生した場合の資産の減少スピードが速いことです。

特に証券会社から資金や株券を借りて、自分の資産以上の金額を取引する信用取引では、1日で資産が無くなってしまうこともあります。

また、売買の判断時間が短いこともデメリットの一つです。

2010年代以降、株取引の現場ではアルゴリズム(機械取引)が、短期投資のメイン参加者として脚光を浴びています。
アルゴリズムはあらかじめ設計されたプログラミングに沿って機械的に売買を実施するため、判断・取引速度は人間の比ではありません。
そうした相手と対峙するため、反射的な速度で売買を判断する必要があります。熟練の投資家であれば可能ですが、そうした技量を身につけるまでには相当な時間を要します。

加えて頻繁に取引を繰り返すため、その度に売買手数料が発生することもデメリットとなります。

中期投資の特徴・メリット・デメリット

中期投資のメリットは、短期投資と比較して期間が長いため、売買の判断時間を長時間持つことができることです。

また、他の投資参加者も短期投資のようなアルゴリズム主体でなく、人間の投資家が多いため、機械のようなプログラミングによる売買の予測ではなく、人間的な判断で予測しながら投資することが可能です。

デメリットは短期投資同様、頻繁な取引に伴う売買手数料の発生です。

また、中期投資では短期投資と比べて株の保有期間が長くなるため、市場環境の悪化などで株価が下落トレンドとなると、損失が生じる可能性が高いこともデメリットとなります。

株の短期投資に向いている人・向いていない人

株の短期投資は性質上、常に株価を確認し取り引きすることが求められますが、どのような人が短期投資に向いているのでしょうか。

短期投資に向いている人

  • 平日の9時から9時30分に集中して取引できること
  • テクニカル分析・チャート分析の知識を身につけていること
  • 損切りを確実に実行できるメンタルを備えていること

まず、日本の株は寄り付きから30分間の9時から9時30分に株価が大きく変動します。そのため、この時間帯に取り引きができる人でないと難しいでしょう。

また、短期投資は長期投資のような企業業績から株価を予測するのではなく、「株が買われるのか・売られるのか」という需給の予測が必要です。
この際に株価チャートを見て、過去の経験則から今後の値動きを予測するチャート分析の知識が求められます。

加えて短期取引では、長期取引ではさほど要求されない損切りという手法が必要となります。

どのような投資家でも、投資できる資金には限りがあります。限られた資金の中で頻繁に取引するため、株価が下落しても上昇するまで待つという手法は採用しづらく、一定水準まで下落したら株を売却し、次の取り引きに移ることが求められます。

損切りは自分の取引が間違っていたと認めることとなるため、プロの投資家でもなかなか実践できないものです。 しかし取引を継続させるために、5%や10%下落したら売却するといったルールを作り、それを忠実に守ることが必須となります。

一般的な会社員の方でこれら条件に合致する方はあまりいないため、短期投資は難しいといえるでしょう。

株の短期取引と運用の方法

短期取引を始める際に、どの価格・タイミングで購入すればよいかということを多くの方が悩まれます。

短期取引をするならば、最終的には、あらかじめ取引の開始価格、終了価格を想定して売買できるようになるべきです

しかし初めは、いつ購入してどのタイミングで売ればよいか分からないと思います。そこで役立つのがチャート分析です。ここでは代表的なローソク足、移動平均線に触れたいと思います。

株を短期で取引する方法

ローソク足には、始値と終値の差異がひとめでわかる「陽線」「陰線」があります。
この2つが、上昇・下落トレンドへの転換を見極めるために使われています。

ローソク足の陽線と陰線

陽線が見られて間もない頃や多く見られる場合は、株価が上昇トレンドだと判断されるため買いのサインです。

対して、陰線が見られて間もない頃や続いている場合は、下落トレンドと考えられるので利益確定や損切で早急に株を売却するべきとされています。

非常にシンプルですが、まずはこのサインを頼りに取り引きを始め、慣れてきたら徐々に他のチャート分析を利用するとよいでしょう。

ローソク足の詳細はこちらの別記事を参照してください。

ローソク足と同じくらい用いられる指標が移動平均線です。

移動平均線とは

ある一定期間の株価の平均値を計算し、折れ線グラフで表したもの
日々の株価の動きをみる「日足チャート」、週次の株価の動きを見る「週足チャート」を用いることが多いテキストがはいります。

さらに、日足チャートなら過去5日と25日の平均値を表す5日線や25日線、週足チャートなら同様に過去の平均値を表す13週線や26週線などがチャート分析に用いられることが多いです。

移動平均線には、株価が上昇、下落に転じる2つの重要なサインがあります。それは、短期の移動平均線(13週線等)が中・長期線に移動平均線(26週線等)に交差するタイミングです。

短期線が、中・長期線を下から上に突き抜ける現象のことをゴールデンクロスと呼び、株価が上昇トレンドに転じるサインとして使われています。

逆に短期線が、中・長期線を上から下に貫いていく現象をデッドクロスと呼び、下落トレンドへの転換のサインとして使われています。

ゴールデンクロスが出たら買いデッドクロスが出たら売りです。
簡単な手法ですが短期投資のヒントとなるため参考にしてください。

株の短期取引でやってはいけないこと

株の短期取引には、やってはいけない禁じ手が2つあります。どちらも大きな損失を出したり、利益を取り逃したりしないために非常に重要な手法です。
短期取引を始めるならば、必ず心がけてください。

損切りをしない

株の短期取引における一番の禁じ手は、損切を実践しないことです。
自分が選んだ株が下落しても、「再度上昇するのではないか」という気持ちが生じるのは自然なことです。

しかし短期取引で失敗する投資家の多くは、損切ができなかったために大きな損失を出して市場から撤退しています。最初に決めた自分の損切ルールは徹底して守ることが、成功への必要条件です。

売買のシナリオがない

もう一つの禁じ手は、購入・売却シナリオを検討していない取り引きです。
短期取引は長期取引と比べて、どのタイミングで購入し、どの程度利益が出たら売却するか、取引シナリオを事前に検討しておくことが重要です。この取引シナリオがなければ、購入後、株をいくらまで保有するのか、買い増しするのか、損切するのか等、自分の行動が場当たり的になってしまいます。

短期投資に慣れるまでは、上述のローソク足、移動平均線等のチャート分析を用いて自身の投資シナリオを考えてみましょう。

株の短期取引に適した銘柄の選び方

ここまで、短期取引の手法やテクニックを解説してきましたが、どの銘柄に投資するかを選ぶことも重要です。
短期取引に適した銘柄について、選ぶ基準と銘柄の一例を見ていきましょう。

短期取引に適した銘柄を選ぶ基準

短期取引に適した銘柄とは

  • 売買が活発な流動性が高く出来高が大きい
  • 当日株価の前日比が大きい
  • 株価の変動が大きな業界

短期取引に適した銘柄は、売買が活発な流動性の高い銘柄です。
短期取引では株価の変動がないと売買ができず、利益を出すことができません。

また出来高(取引量)が少ないと、株を売りたいのに買い手が不在で売れないという状況が発生します。
そのため、まずは出来高が大きい銘柄から検討しましょう。

次に確認すべき点として、当日株価の前日比の大きさがあります。 前日比とは、前日の終値と比べて現時点の株価がどれほど増減したかを表示した数字です。
この数字が大きいほど、取引価格の幅が広くなるため、利益も大きく狙えます。

また業界全体のトレンドも重要な点です。
短期取引の場合、株価の変動が大きい方が利益を狙える傾向にあります。
創薬ベンチャー業界や金融業界、IT業界などは、一般的に株価の変動が大きい傾向にあります。

一方、食品業界などは株価の動きが小さいため、候補にはなりにくいでしょう。

短期取引向きの銘柄一覧

短期取引向きの銘柄は逐次変わりゆくため、ここでは2020年3月時点での推奨銘柄をご紹介します。

基本的に値動きが激しいマザーズ市場の中で、出来高が大きい銘柄が短期取引に向いています。

  1. アンジェス(4563)
  2. そーせいグループ(4565)

アンジェス(4563)、そーせいグループ(4565)はマザーズ市場に上場する創薬ベンチャーです。
グローバル規模で医薬品開発に取り組むバイオ医薬品企業で、どちらも短期取引の投資家に好まれています。出来高もマザーズ市場における上位の銘柄であるため、流動性も確保されています。

  • フィンテックグローバル(8789)

フィンテックグローバル(8789)はマザーズに上場する金融系企業です。
企業投資を軸に、公共ファイナンス、M&A(企業の買収・合併)仲介、航空機アセットマネジメントなどの「投資銀行事業」を主な業務としています。
この銘柄は一日の株価の変動幅が大きく、10%程度変動することも少なくありません。

  • ミクシィ(2121)
  • メルカリ(4385)

ミクシィ(2121)、メルカリ(4385)はマザーズに上場するIT企業です。
どちらも一般消費者向けサービスを展開しているため、知名度の高さから取引が活発に行われています。

短期投資を始める際は、自分の知っている企業の方が安心感を持って取引できるため、初めて短期取引に挑戦するならば、取引候補としてもよい銘柄でしょう。

この記事のまとめ

株の短期取引を成功させるには取引環境の条件や取引テクニック、知識が必要です。
きちんと準備をして臨めば短期間で利益を狙える可能性はあるものの、初心者が簡単に手を出して大きな利益を得られるものではないということを理解しておきましょう。

執筆者 堤國之助
ファイナンシャルプランナー
堤國之助 (つつみ・くにのすけ)
国内証券会社を経て、外資系コンサルティングファームに勤務。 並行して、独立FP(ファイナンシャルプランナー)として投資初心者に向けたコンサルティングを実施。

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