株の初心者に「ナンピン買い」が危険な理由とは?

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手持ち銘柄の株価が下がったとき、あなたはどのように行動しますか?

  1. 「今は我慢のとき。株価が戻ってくるまで待とう」
  2. 「このまま下がり続けたら大損だ。さっさと売ろう」
  3. 「安く買えるチャンス!買い足そう。株価が戻れば儲けが出るぞ」

株初心者が選んではいけない選択肢が3です。
株価が下がったときの買い増しは「ナンピン買い」という投資行動に当たります。

買った銘柄の株価が下がったときに重要なのは、早めに売って損失を最小限にとどめること。株初心者にとって「損失を小さくする」ことは、利益獲得を目指すうえで大切なスキルとなります。

  • ナンピン買いとは株価の値下がり時に株を「買い増す」投資手法
  • 一度下がった株が値上がりしないとナンピン買いは成功しない
  • 一度下がった株がいつ上がるのか見極める必要があるため、ナンピン買いは初心者には向かない

ナンピン買いとは何か

「ナンピン買い」とは、買った株が値下がりしたときに、さらに株を買い増すことで、「平均購入単価(平均取得単価)」を引き下げることを目的とした投資手法です。
平均購入単価とは、「1株当たりの購入金額」を示す平均価格を指します。

平均購入単価=株の購入に支払った総額÷株数

例えば、上の図のように1株1,000円の株式を100株買ったときの平均購入単価は、10万円÷100株で1,000円(※)となります。

1,000円で100株買った後、株価が200円まで値下がりしてしまったとします。
ここでさらに100株買い増す「ナンピン買い」をすれば平均購入単価は、(10万円+2万円)÷200株で600円(※)となります。(※手数料を除く)

こうすれば、1,000円で100株購入したときより平均購入単価を400円引き下げられ、株価が600円まで回復すれば損をせずに済みます。

ここまでが基本のナンピン買いの仕組みですが、次からはナンピン買いをすることのメリットやデメリットを見ていきましょう。

ナンピン買いのメリットと成功例

上述のとおり、平均購入単価を下げるためにおこなうのがナンピン買いです。

では、平均購入単価を下げるとどんなメリットがあるのでしょうか。ナンピン買いには下の2つのメリットがあります。

  1. 損益分岐点の価格が下がる
  2. 株価が値上がりした際の利益が大きくなる

メリット1. 損益分岐点の価格が下がる

1の、損益分岐点の価格が下がるというのは、損益がプラスマイナスゼロになる価格(=損益分岐点)が低くなるということです。

先ほどの例を用いると、1,000円で100株買った後200円まで値下がりした場合、何もしなければ当然、株価が1,000円に戻らなくては損益はプラスマイナスゼロになりません。

ところが200円の株価で100株ナンピン買いした場合、平均購入単価は600円となるため、株価が600円に戻れば損益はプラスマイナスゼロとなります。

ナンピン買いなし 1,000円×100株:購入単価=1,000円
損益分岐点=1,000円
ナンピン買いあり 1,000円×100株:購入単価=1,000円
200円×100株:購入単価=200円(買い増し)
損益分岐点=平均購入単価=600円

200円の株が3倍の600円に戻る可能性と、5倍の1,000円に戻る可能性は大きく変わってくるので、より可能性の高い方を選択できるのです。

メリット2. 株価が値上がりした際の利益が大きくなる

1の例と同様のケースで、ナンピン買いをしなかった場合、株価が1,000円に戻っても損益はプラスマイナスゼロです。
一方、ナンピン買いをして平均購入単価が600円の株を200株保有しておけば、株価が1,000円となった際の利益は(1,000円-600円)×200株となり、8万円(※)の利益が出るのです。
つまり、ナンピン買いによって8万円の利益差が生じたことになります。
(※手数料を除く)

ナンピン買いなし 1,000円×100株:購入単価=1,000円
株価が200円まで下落→1,000円まで回復
→損益分岐点が1,000円なので損益は0
ナンピン買いあり 1,000円×100株:購入単価=1,000円
200円×100株:購入単価=200円(買い増し)
株価が1,000円まで回復
→平均購入単価が600円なので利益は8万円

つまりナンピン買いは、平均購入単価を下げておいて損失を最小限に抑えるとともに、株価が上がった際の利益を多くすることを狙える手法でもあるのです。

ナンピン買いのデメリットと失敗例

ここからは、ナンピン買いによって損失が大きくなる失敗パターンを説明していきます。

ナンピン買いのデメリットは、損失が大きくなるおそれがあることです。
上記と同様の例で、1,000円で100株買った後200円まで値下がりしたため100株ナンピン買いしたとします。

この株価が上昇して600円以上になれば利益が出るというのは上記のメリットでご説明しました。

しかし問題は、さらに100円まで株価が下がってしまった場合です。
例えばこのときに急に現金が必要となったため売却する必要が発生したとします。すると、(1,000円-100円)×100株+(200円-100円)×100株で、10万円の損となります。ナンピン買いをした分の1万円が損失として増えたことになります。

ナンピン買いなし 1,000円×100株:購入単価=1,000円
株価が200円まで下落→さらに100円まで下落
損は9万円
ナンピン買いあり 1,000円×100株:購入単価=1,000円
200円×100株:購入単価=200円(買い増し)
株価が200円まで下落→さらに100円まで下落
→1,000円で買った株の損が9万円・200円で買った株の損が1万円で合計10万円の損

このケースでは一度しかナンピン買いをしていないため、損失は1万円しか増加していません。
ところが実際の株取引では、株初心者の方が株価が下がるたびにナンピン買いを繰り返すことが多々あります。
株価が100円下がるごとにナンピン買いしたとすると45万円の損、株価が200円下がるごとでは25万円の損となります。
ナンピン買いしなかった場合と比べて、それぞれ損失が36万円、16万円も大きくなってしまうのです。
これが、安易にナンピン買いをした際のデメリットです。

チャート分析を使ってナンピン買いのタイミングを見極める

ナンピン買いのメリット、デメリットを整理したところで、次はナンピン買いを成功させるにはどうすればよいのかを考えてみましょう。

上で見てきたように、株価が下落し続ける状況ではナンピン買いは失敗してしまいます。ナンピン買いが成功するのは、株価上昇が見込める場面です。

しかし、株価の上下を見極めるのはプロでも難しいものです。
そこで株の世界では、株価の動きを見極める材料として「チャート分析」という手法を使います。

チャート分析は肯定派、否定派で主張が激しい手法ですが、チャート分析を利用して取引する投資家は少なくありません。チャート分析を知っておくことは、他の投資家の売買を把握し、それに伴う株価の変動予測に役立つといえるでしょう。

チャート分析は多々手法が存在しますが、ここでは代表的な3つをご紹介します。

  1. 移動平均線
  2. ローソク足
  3. ボリンジャーバンド

1の移動平均線とは、一定期間の株価の平均値を線としてつなぎあわせた指標です。
下のチャート図でいうと、紫と緑と青の線のことです。

移動平均線は、現在の株価が一定期間の平均に比べて上昇方向か、下落方向か、横ばいかを把握するために利用します。

2のローソク足とは、一定期間の相場の4本値(始値、高値、安値、終値)を用いて1本の棒状の足を生成したものです。

ローソク足は多くの種類がありますが、棒の中心にある四角が白い場合は「陽線」、黒い場合は「陰線」と呼び、陽線は買いが優勢、陰線は売りが優勢と覚えてください。

3のボリンジャーバンドは、過去の値動きを表す移動平均線に、過去の値動きから計算される値動きの幅の目安となる線を加えたものです。

統計学的に価格が目安線の範囲内で納まる確率は約95%となるため、上昇トレンドや下落トレンドを分析するのに有効とされています。

下記チャートは川崎汽船(株)(9107)の2019年4月から7月までの株価推移です。

引用元:Yahoo!ファイナンス(トレンドの位置はFUNDAVI編集部による)

赤と緑の線が「移動平均線」、真ん中の棒状の足が「ローソク足」、一番外側の灰色の線が「ボリンジャーバンド」です。
これを見ると、ボリンジャーバンドの範囲内で移動平均線を上回る上昇トレンド、移動平均線を下回る下落トレンドを繰り返していることが明白です。
そして上昇トレンドの際には買いが優勢の陽線、下落トレンドの際には売りが優勢の陰線が表れています。

ナンピン買いを成功させるには、チャートを分析して上昇トレンドをあらかじめ予測し、その直前にナンピン買いをしておく必要があることがわかります。

このように、ナンピン買い成功に必要な値動きの予想には、移動平均線、ローソク足、ボリンジャーバンドといったチャート分析の勉強が必要となります。
これらを身につければナンピン買いのタイミングを見極めるための大きな武器になることでしょう。

株価が下がったとき、初心者はどうすればいい?

ここまでご説明したとおり、ナンピン買いの成功にはかなりの研究が必要です。
投資初心者や自分の予想に自信のないうちは、株価が下がったときにどうすればよいのでしょうか?
初心者のうちは、ナンピン買いをするよりも早めに損切りをすることで損失を最小限にとどめることを考えましょう。
また損失切りをする条件をあらかじめ決めておくのが、焦らずに株を運用するコツです。

慣れないうちは「損切り」で危機回避

1,000円で買った株を一つもっていて、その株が900円に値下がりしたとき、あなたは100円の「含み損」をもっていることになります。

含み損は「今売れば確定する損失」を意味しています。
再び株価が上がり、利益が出るまで待つのではなく、含み損が出ている株を思い切って売ることを「損切り」といい、この例だと900円に値下がりした時点で株を売り、100円の損失を確定させることが株初心者にとって大切な考え方だといえます。

その理由として、投資家心理が挙げられます。

まずは「どちらの状況が株を売りにくいか?」について考えてみましょう。

  1. 1,000円の株が900円に値下がりし、100円の含み損が出ている
  2. 1,000円の株が100円に値下がりし、900円の含み損が出ている

上記の状況を比較すると、2は売った時点で投資額の90%を失う損失を出しますが、1だと10%の損失に抑えられます。

また、2の状況に近づくほど「売れば投資した金額の多くを捨てることになる。再び株価が上がるのを待つしかない」という心理となり、売るに売れない状況が続くことを「株を塩漬けにする」ともいいます。

株の「塩漬け」を回避するためにも、株式投資においては、売買で利益を出すことと同じくらいに「損失を最小限で抑えること」が重要なのです。

マイルールの設定

どのタイミングで損切りをすればいいか、あらかじめマイルールを設定しておけば「いずれ株価が上がるはず…」といった欲に左右されず、損失を抑えることが可能となります。

例えば、1株1,000円の株式を100株買った時点で「10%株価が下がったら損切り、30%株価が上がったら利益確定」などのマイルールを設定することで、売却のタイミングを逃さずに運用することが可能となります。

投資の初心者は、ナンピン買いを考える前に、損失をなるべく回避できる方法を試してみましょう。

この記事のまとめ

ナンピン買いは、値下がりした株をあえて買い増しして、再び株価が上昇したときに利益拡大を狙う手法ですが、意図に反して株価が値下がりしたときには、損失も大きくしてしまう「諸刃の剣」といえます。株式投資の取引に慣れないうちは、損切りでのリスク回避を検討しましょう。
執筆者 堤國之助
ファイナンシャルプランナー
堤國之助 (つつみ・くにのすけ)
国内証券会社を経て、外資系コンサルティングファームに勤務。 並行して、独立FP(ファイナンシャルプランナー)として投資初心者に向けたコンサルティングを実施。

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