老後のお金が気になり始めた投資初心者におすすめする「投資信託の選び方」

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「人生100年時代。老後のお金が心配。投資を始めようか?」とお考えの方に、年金基金の実務経験があり、自らも老後資金づくりの真っ最中である証券アナリスト兼FPが解説します。

投資は、「いつ、どこで、何を、いくら、どのように?」を学んでから始めるのが理想的です。 この記事では、「何を」について説明します。

老後資金づくりに必要なこととは?

今20歳の人の平均寿命は100歳に、40歳の人の平均寿命は95歳になる、といわれています。「想定以上に長生きして、お金が足りなくなる」事態は困りますよね。

では、どうすべきでしょう?

  • 金融リテラシー(お金の知識・判断力)を身につけ【Study】
  • 将来の家計(収入と支出、資産と負債)を概算で見通し【Plan】
  • 貯蓄だけでなく投資にも取り組んで合理的に資産を形成し【Do】
  • ときどき全体を点検し【Check】
  • 必要に応じて軌道修正していく【Action】

このようなことが必要ではないでしょうか。

何を買ったらよいのか?

投資を始めるにあたり、基本的なスタンスが、

  1. 投資理論や国の制度を踏まえて、老後資金を合理的に形成していきたい
  2. 時間をかけて、金融資産を計画的に形成していきたい
  3. 日々の値動きをあまり気にせず、さほど手間をかけずに上記1と2を実行したい

に合致するとしたら、「インデックス型の投資信託」がよいでしょう。

私自身、上記1・2・3に該当しますので、私が保有している金融商品の大部分はインデックス型の投資信託です(運用概況をブログに公開しています)。

「投資信託って何?」という方のために、「株(株式といいます)」と比べてみましょう。無理やり「ジュース」に例えると、下記のようなイメージです。

  • 株式 = オレンジジュース、トマトジュース(材料は1種類)
  • 投資信託 = ミックスフルーツジュース、ミックス野菜ジュース(多種類の材料)

値動きの上下のブレ幅(リスクといいます)を「カレーの辛さ」に例えれば、

  • 株式 = 辛口
  • 投資信託 = 中辛

あたりでしょう。下の表で、株式に比べ、投資信託が老後資金形成に向いていそうなことをご確認ください。

株式 投資信託
概要 証券取引所に上場している
企業の株式
多数の株式などを組み合わせた(ひとまとまりにセットした)金融商品
効果 分散効果を得にくい 分散効果を得やすい
変動 価格(株価)は証券取引所の
取引時間中、リアルタイムで変動
価格(基準価額)は1日単位で変動
変動幅 値動きの上下のブレ幅が大きい 株式などの個別銘柄への投資に比べて、値動きの上下のブレ幅は小さい
選び方 銘柄の選定が難しい(最悪の場合、
企業が倒産することも)
(後述する「インデックス型」の場合)株式などの個別銘柄への投資に比べて、銘柄の選定は容易
積立 積立投資しづらい 積立投資しやすい
制度 利用できる非課税制度が少ない 利用できる非課税制度が多い

投資信託は、運用手法によって、「アクティブ型」と「インデックス型(パッシブ型ともいいます)」に大別できます。

アクティブ型 インデックス型
運用方法 ベンチマーク(日経平均など)を上回る収益率を目指し、ファンドマネージャーと呼ばれる人(たち)が銘柄選定や売買を判断する( = 市場平均に勝てそうな銘柄を人間が選ぶ) ベンチマークと同等の収益率を目指す( = 市場平均と同じ値動きになるよう、ほぼ機械的に運用する)
ファンドマネージャーの影響 影響を受ける 無関係
投資家が負担するコスト 銘柄選択や配分比率調整など、調査・分析・売買を繰り返すため人件費など諸費用がかかり、一般的にコストが高い( = 収益率の押し下げ圧力が大きい) 人件費など諸費用が少なくて済む分、一般的にコストが低い( = 収益率の押し下げ圧力が小さい)

毎年、ベンチマークを大きく上回るアクティブ型の投資信託はいくつもあります。 しかしながら、去年の成績が良かったからといって、今年も来年も良いとはいえません。ベンチマークを上回り続けるアクティブ型がどれなのか、未来を予知することは不可能です。

「だったら、ベンチマークと同等の成績で良いのでは? コストも安いし」というのが、私がインデックス型をおすすめする根本的な考えです。

インデックス型の投資信託の選び方は?

まず、どの資産区分に投資するかを決めます(その結果として、連動を目指すベンチマークを選ぶことになります)。 下の表が、一般的な資産区分と代表的なベンチマークです。

資産運用区分1 資産運用区分2 代表的なベンチマーク
株式 国内 TOPIX
先進国 MSCIコクサイ
新興国 MSCIエマージング・マーケット
債券 国内 NOMURA-BPI総合
先進国 FTSE世界国債(除く日本)
新興国 JPモルガンGBI-EMグローバル・ダイバーシファイド
REIT(不動産投資信託) 国内 東証REIT
先進国 S&P先進国REIT(除く日本)
新興国 S&P新興国REIT

「国内株式」と「先進国株式」をベースとして、この2つだけでも結構ですし、さらにいくつか追加してもよいでしょう。複数の資産区分を「そこそこ」適切な配分で組み合わせることで、全体として「それなりの」分散効果を期待できます(理由の説明は省きます)。

コスト(費用)についても確認しておきましょう(税金は除きます)。

費用 支払時期 投資信託を選ぶ際のポイント
購入時手数料 購入するときに差し引かれる直接的な費用(%で表示) ゼロのものを選ぶ(「ノーロード」といいます)
信託報酬 保有中、毎日差し引かれる間接的な費用(年率を%で表示) できるだけ低い(安い)ものを選ぶ
信託財産留保額 売却するときに差し引かれる直接的な費用(%で表示) ゼロにこだわる必要はない(理由の説明は省きます)

信託報酬の他に、監査費用や、投資信託の中の株式などの売買費用なども投資信託の価格(基準価額)に影響する間接的な費用ですが、そこまでは気にしなくてもよいでしょう。

では! 買うべき投資信託を探します。

ネットで[投資信託]を検索し、金融機関以外のサイトで、

  • 自分が選んだベンチマークごとに、
  • 購入時手数料がゼロのもの(ノーロード)、かつ、
  • 信託報酬ができるだけ低い(安い)もの、かつ、
  • 分配実績がないもの

を探してください。

以下は、モーニングスター株式会社の「詳細条件でファンドを検索」を使う場合の例です。

カテゴリー
  • 国内大型ブレンド
  • 国際株式・グローバル・除く日本(為替ヘッジ無)
  • 国内REIT
  • 国際REIT・グローバル・除く日本(為替ヘッジ無)
などから選択
ファンド種類 「ETF・DC専用・SMA専用を除く全ファンド」にチェック
インデックスファンド区分 「インデックスファンドのみ」を選択
購入手数料率 「0%」を選択

上記のような内容で検索をしてみましょう。次にその後の手順について解説します。

  1. 結果が表示されたら、見出し行の「信託報酬等(税込)」をクリックし、信託報酬が安い順に並べかえます
  2. 投資信託の名称(ファンド名)をクリックすると、より詳細な情報が表示されます
  3. 「ファンドの特色」で、自分が選んだベンチマークと一致しているかどうかを確認し、異なっている場合、その投資信託は購入候補から除外します
  4.  
  5. 続いて、同じページの「分配金履歴」を確認し、分配実績があるものは購入候補から除外します

ベンチマークが合っていること、分配実績がないことを確認したら、カテゴリーごとに、除外されずに残った上位いくつかの中から購入する投資信託を決めていきます。 ほとんどの場合は、素直に1位を選べばよいでしょう。

「いつ、どこで、いくら、どのように」なども検討すると、場合によっては2位または3位などの方が適切なこともあります。

「発売されて間もないから、しばらく様子を見よう」という判断もあります。

この記事のまとめ

一般の現役世代の方が老後資金形成の柱とすべき金融商品は、「インデックス型の投資信託」です。 「いつ、どこで、いくら、どのように?」についてもあわせてご検討のうえ、第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

執筆者 福嶋 淳裕
ファイナンシャル プランナー
福嶋 淳裕 (ふくしま ・あつひろ)
個人で活動をしている独立系FP。(ホームページはこちら)保有資格には日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、日本FP協会認定CFP®などがある。ブログ「あなたの家計は100歳までもちますか?」を運営

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