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年末年始相場の実力とは?
年末から年始にかけて、仮に日経平均株価で株式を売買した場合、どのような結果となるのでしょうか?
リーマンショックのあった2008年以降、11年分の結果は下記のとおりです。
年 | 大納会(終値:円) | 大発会(終値:円) | 差(円) |
---|---|---|---|
2008年 | 8,859 | 9,043 | +184 |
2009年 | 10,546 | 10,654 | +108 |
2010年 | 10,228 | 10,398 | +170 |
2011年 | 8,455 | 8,560 | +105 |
2012年 | 10,395 | 10,688 | +293 |
2013年 | 16,291 | 15,908 | ▲383 |
2014年 | 17,450 | 17,408 | ▲42 |
2015年 | 19,033 | 18,450 | ▲583 |
2016年 | 19,114 | 19,594 | +480 |
2017年 | 22,764 | 23,506 | +742 |
2018年 | 20,014 | 19,561 | ▲453 |
日経平均を年末の終値で買って、翌年最初の取引日の終値で売却した場合、利益が出れば「勝ち」とすると、11年間で7勝4敗の成績です。
年末から年始にかけて上昇傾向は見られますが、リーマンショック後は株式市場全体が回復していましたので、単にアノマリーが要因とは考えにくいでしょう。
また、アベノミクス相場のスタートした2013年以降は3連敗していることから、単に年末年始だから株価が上昇したとはいえません。
統計上では確実でないのにもかかわらず、なぜ日本では「年末年始に株が上がる」という話があるのでしょうか。
そこには、年末年始特有のイベント性や、その時期ならではの投資家による行動などが考えられます。
株式市場における大イベント「大納会」と「大発会」とは?
年末年始に、日本の株式市場では「大納会」「大発会」というイベントがあります。
- 大納会(だいのうかい)
- 証券取引所の年末の最終取引日に行われる催事のこと。
一般的には、催事の行われる年末の最終取引日そのものが「大納会」と呼ばれる。
- 大発会(だいはっかい)
- 証券取引所の年始の最初の取引日に行われる催事のこと。
一般的には、催事の行われる年始の最初の取引日そのものが「大発会」と呼ばれる。
年始の取引初日の「大発会」、年末の取引最終日の「大納会」は、季節を飾る重要なイベントとして認識されています。
特にその年最後の取引日に行われる大納会は、東京証券取引所の関係者から各証券会社の首脳陣までが東京証券取引所に集まります。
その年に活躍した著名人が東証の鐘を鳴らすなど、業界を挙げての一大イベントとなっていて、毎年ニュースやWeb配信などで大々的に報じられています。
「大発会」は、年最初の取引が後場も開催されるようになってから以前よりイベント性は薄れていますが、その年の株式市場の行方を占ううえで、今も話題になることが多いです。
よって「大納会」「大発会」の株価の動きは、単に節目のタイミングという以上に、そのイベント性から注目を浴びています。
特に国内市場では「大納会」「大発会」は重要なイベントであり、ご祝儀として株式が買われる可能性があります。
実際に日経平均株価が最高値38,957円をつけたのは、1989年の「大納会」の日の場中です。
1989年から約30年の月日は経過していますが、「大納会」を重視する証券業界のスタンスは今も健在です。
よって「大納会」「大発会」に向けての株式市場上昇の可能性は無視することはできません。
年末年始に投資家は「同じ行動」をする!?
イベント性以外にも年末年始という時期は、以下のような3つの影響が考えられ、結果として株価を動かす要素として働いていると考えられます。
- 海外投資家の影響
- クリスマス休暇の影響
- 個人投資家の影響
海外投資家の影響
日本の株式市場の取引は、すでに6割以上が外国人投資家で占められています。よって国内の証券市場において、海外投資家は大きな影響力を有しています。
そして海外では多くの投資会社をはじめとする企業の決算が12月に行われます。特に年始は、新年度として新たな投資が行われるタイミングです。
逆に12月の中旬まではそれまでの利益を確定するために、新規投資よりも手仕舞い売りという投資判断を行う場合があります。
これらの行動を取る海外投資家の存在が、国内の年末年始の株価の動きに影響を与えている可能性があります。
年末は利益を確定させるための手仕舞いの売り注文が増えるため、株価は下がりやすくなります。一方で年始は新たな資金での買い注文が増える結果、株価は上がりやすくなります。
クリスマス休暇の影響
海外ではクリスマス休暇を取るのが一般的です。クリスマス前後の金融市場は閑散相場となり、値動きが鈍くなる傾向にあります。
クリスマス休暇の後は、1月1日の新年の休日があるのみで、1月2日から通常どおりの仕事が行われます。
日本では1月1~3日は新年の祝日ですが、海外では1月1日は単なる休日です。
先に取り上げた海外企業の12月年度末とあわせて、クリスマス休暇明けから海外の投資家は新年度の取引を開始します。よって年末年始はクリスマス休暇明け、かつ新年度スタートで、新たな投資活動がなされている可能性があります。
また特にアメリカでは、クリスマス商戦が小売業の一大イベントで、年間の売り上げの多くをクリスマス商戦で上げる企業もあります。
12月のクリスマス商戦の結果は重要な景気指標の一つであり、海外投資家の投資戦略に影響を与えます。
例えばクリスマス商戦で大ヒット商品が生まれれば、開発企業の大幅な増収が予期され、業績向上を見越した買い注文が入ることで、関連銘柄の株価は上昇する可能性があります。
個人投資家の影響
12月は国内個人投資家にとっての年度末です。年明けの確定申告を控え、損益を12月に確定させる投資家も多数存在します。
また、年始の1月から新規の投資資金を投じる投資家も、12月決算の海外投資家同様に存在します。
国内のサラリーマンは12月にボーナスが支給されるので、12月のボーナス支給後に、新たに株式投資を開始する投資家も存在します。
2017~2018年のビットコインなど暗号資産(仮想通貨)業界の注目銘柄では、日本人のボーナスシーズンに価格上昇が見られました。株式市場も同様の理由から上昇する見通しがあります。
個人投資家の場合も前述の海外投資家の場合と同様に、株式の需給の観点から、確定申告を控え利益確定の売り注文が出やすい12月は株価が下落する可能性があります。新年度に加えボーナスにより新たな投資資金が入りやすい1月は、株価が上昇する可能性があります。
2018~2019年の相場から見るアノマリーの不確実性
2018~2019年の年末年始は3年ぶりの下落となりました。本下落の背景から、年末年始のイベント性や投資家の行動は、必ずしも株価を上げる要素にならないことが説明できます。下のチャートを見てみましょう。
出典:Yahooファイナンス
2つのチャートのうち、上はNYダウ平均、下は日経平均を示しています。
2018年は12月に米国の中央銀行に当たるFRBが、政策金利の引き上げを行いました。
政策金利の引き上げは将来的な米景気後退につながるため、それまで上昇一色だった米国株式市場は急落しました。
また金利上昇による米国の株式市場下落の影響は世界各国にも及び、日本市場も大幅な株安となりました。
2018年の年末は米国株式市場急落の最中だったこともあり、日本での年末年始の株価上昇アノマリーは見られず、3年ぶりのマイナスとなる結果を招いています。
このように、年ごとの世界情勢や経済状況が与える株価への影響が、前述した「毎年行われるイベント」より大きくなると、株価は不安定になります。したがって「年末年始に株が上がる」日本のアノマリーは、不確実だといえます。