目次
PERとは?
PERは、株価が割安か割高かを表す指標の一つです。株価が「1株当たりの純利益」の何倍になっているかを表します。
つまり、企業の1株利益の何倍の値段で株を買えるのか、お得かどうかがわかる投資尺度です。
ここでは、PERが何を表す指標であるのか、PERの計算方法、またそもそも企業の利益や純利益とは何であるのかを説明します。
PERは何を表す指標であるか
PERは、ある企業の株価が、出している利益に対し割安か割高かを判断する指標です。
株価が1株当たりの純利益(EPS)の何倍になっているかを示します。
ある株をその時の株価(時価)で購入し投資した際、投資額を回収し元を取るのに何年間かかるかを表す数値でもあり、PERが低ければ低いほど短い期間で投資額を稼げるということになります。
PERの計算方法
例えば、ある企業の純利益が5,000万円で発行済みの株式が50万株だった場合、その企業の「1株当たりの純利益」は100円です。
そして、その企業の株価が3,000円だとすれば、株価(3,000円)÷1株当たりの純利益(100円)=30となり、PERは30倍となります。
純利益 | 発行済み株式数 | 1株当たりの純利益 | 株価 | PER |
---|---|---|---|---|
5,000万円 | 50万株 | 100円 | 3,000円 | 30倍 |
PERの数値が低い方が割安な株式といわれます。PERが低いということは、企業が上げている利益の割に株価が安いと判断できるからです。
例えば下の表のように、同じ企業の株式で1株当たりの純利益が変わらなければ、PERが15倍のときの方が割安ということです。
1株当たりの純利益 | 株価 | PER |
---|---|---|
100円 | 1,500円 | 15倍 |
2,000円 | 20倍 | |
3,000円 | 30倍 |
企業の利益とEPS
そもそも、企業の利益とは何でしょうか?企業には、大きく分けて以下3つの利益があります。
- 営業利益:本業で稼いだお金
- 経常利益:営業利益に、銀行の利息など本業以外で得た収益を加え、本業以外で発生した経費(費用)を差し引いたお金
- 純利益:経常利益から税金などを引いた利益で、最終的に企業に残ったお金
純利益は、最終的な利益で「当期純利益」「税引き後利益」とも呼ばれ、配当金のもとになるお金です。
この純利益を発行済みの株式数で割って算出するのがEPS(Earnings Per Share)で、企業の収益力を判断する指標となります。
EPS(円)=純利益÷発行済みの株式数
EPSの数値が高ければ利益を上げる能力が高く、低ければ利益を上げる能力が低いということになります。
PERの目安と活用方法
PERの具体的な目安としては、15倍が平均とされています。
これは、日経平均株価のPERが14~16倍の間で推移しているためです。したがって15倍を下回っている株式はおおむね割安と判断できます。
例えばPERがそれぞれ約10倍・15倍・20倍の銘柄には以下のようなものがあります。(※2020年1月現在)
PER | 銘柄名 |
---|---|
約10倍 | ブリヂストン、ソニー、静岡銀行 |
約15倍 | J-オイルミルズ、クボタ、日本調剤 |
約20倍 | ディー・エヌ・エー、なとり、しまむら |
目安として、PERが15倍を下回っていれば割安、上回っていたら割高と判断できますが、PER15倍以下の銘柄をやみくもに購入しても利益が出るとはかぎりません。
なぜなら、平均PERは業界によって異なるからです。
例えば、銀行業のPERは、10倍より低くなる銘柄が多いため、10倍の静岡銀行の株は割高といえます。
一方、食料品のPERの平均値は約20倍なので同じ業種で比較したとき、約15倍のJ-オイルミルズは割安といえるでしょう。
もちろん、PERが15倍以下でも将来性のない企業は割安とはいえません。逆に、PER15倍以上でも将来性のある企業であれば、現時点で買い時であるともいえます。
「将来性がある」とは?
将来性があるというのは、業績が伸びていて株価が上昇する可能性が高いということです。
現時点でPERが(前年と、または同業他社と比較し)高くても、購入後さらにPERが上昇、つまり株価が上昇すれば、いずれ売却するときに利益が見込めるでしょう。
PERがその業界の平均値と比べて低かったり高かったりしたとき、買った方がよいか、買わない方がよいか判断するには以下のように考えます。
PERが低くても買わない方がいい株 | PERが高くても買った方がいい株 |
---|---|
今後の成長が見込めない企業の株 例:過去の実績が十分あっても社会情勢によって成長が期待しづらい企業 | 今後の成長が見込める企業の株 例:最先端技術への投資に注力している企業や社会的ニーズが大きい技術に強みをもつ企業 |
PERは理解すればわかりやすい指標ですが、数値の高い低いだけで判断するのではなく、企業の将来性も見ながら総合的に判断することが大切です。
PER15倍以下の銘柄を探す方法
PERを出すために、自分で企業の利益状況を調べて計算しようとすると膨大な労力が必要になるため難しいでしょう。
そこで、証券会社の取引画面上でPERが15倍を下回る株式を簡単に探す方法を紹介します。証券会社によって画面のレイアウトは異なりますが、ここでは楽天証券のアプリを例に説明します。
手順 | スマホ画面 |
---|---|
楽天証券のアプリにログインし、銘柄検索をタップ | |
「スーパースクリーナー」をタップ | |
「検索条件追加」をタップ | |
PERを追加する | |
検索したいPERの範囲を入力し、検索 |
以上の手順でPERによる銘柄検索ができます。
PER以外の指標
PERは利益が出ている企業では割安かどうかを判断しやすい指標となりますが、利益があまり出ていない場合は参考にしづらい可能性があります。
そのため、景気が上向きになっているときはPERが有効ですが、不景気の場合はPBRなどの別の指標を用いて株価が割安かどうかの判断をするといいでしょう。
ここではPER以外の指標であるPBRとROEについて解説していきます。
PBRとは
PBRとは、株価を企業の資産と比較することで株価が割安かどうかを判断する指標です。利益と株価を比較するPERと比べると、企業の資産と株価を比較するという点が異なります。
PBRは株価を1株当たりの純資産で割って算出します。
純資産とは企業の総資産から負債を引いた金額のことです。現時点で企業がもっている資産そのものの金額を表します。
PBRの式
PBR(倍)=現在の株価÷1株当たりの純資産
1株当たりの純資産の方が現在の株価より高い場合、つまりPBRが1倍以下のとき「割安である」と見なされます。
例えば、株価が1,000円で1株当たりの純資産が500円だった場合、1,000÷500=2でPBRは2倍です。
1株の純資産に対して2倍の価格で株が買われていることになり、割高となります。
PERとPBRの違いと共通点
次に、PERとPBRは何が違って何が共通しているのかという点についてです。
指標 | 数値の出し方 | 判断基準 | 適した投資スタイル |
---|---|---|---|
PBR | 株価÷1株当たりの純資産 | 数値が1倍以下だと割安 | 株価下落も考慮した安定投資 |
PER | 株価÷1株当たりの純利益 | 数値が15倍以下だと割安 | 成長株に投資し大幅な利益狙い |
利益と株価を比較するPERに対し、PBRは企業の資産と株価を比較する指標です。
さらに、PERは予想利益にすぎず、企業として成長の期待が大きいと100倍近くなるなど、PBRに比べ変化しやすい値です。
安定した投資を望む方はPBRを指標とする方が向いているかもしれません。
PERとPBRはどちらも、以下のような点で共通の性格をもった指標です。
- 数値が低いほど割安とされる
- 業種の平均と比較すべきである
- 他の指標と合わせて割高割安を判断すべきである
ROEとは
他に別の指標として役立つのはROE(自己資本利益率)です。これはアメリカなどで重視されている指標であり、企業が株主から集めた資金からどれだけ利益を生み出しているかを表します。
ROEの式
ROE(%)=当期純利益÷株主資本×100
ROEは高ければ高いほど資金から効率的に利益を生み出している、つまり株主の期待に応えていることを表します。
そのため、ROEが高い企業の株式は多くの投資家から人気を集めやすくなっています。
これらの指標を組み合わせて使う方法について、次で解説していきます。
【実践編】PER・PBR・ROEを合わせて使う方法
ここからは、実際に買おうと思っている銘柄の株価が割安か割高か判断していきましょう。
まずは、お目当ての銘柄のPER・PBR・ROEの数値を調べましょう。
PERが10倍以下の場合
- 同業他社と比べても低く、PBRも1倍以下であれば割安といえる
- PBRが同業他社と比べて高ければ、割高である可能性あり
PERが100倍近い場合
- PBRが1倍以下で同業他社と比べて低ければ、安定した業績や将来性が見込めるので割安である可能性あり
- PBRが同業他社と比べて高ければ、割高である可能性あり
各指標を使って総合的に判断する目安を、以下のようにまとめました。
例 | PER | PBR | ROE | 評価 |
---|---|---|---|---|
A社 | 10倍 | 0.9倍 | 15% | 利益が上がっていて資産のわりに株価が安い、優良銘柄 |
B社 | 100倍 | 2倍 | 25% | 割安ではないが、経営効率が良く将来性がある |
C社 | 80倍 | 3倍 | 5% | 経営効率が悪く、業績不振に陥っているかも |
※実在する企業の例ではありません。
その企業全体の経営状態や資産、それぞれのバランスを見るために、さまざまな指標を上手に使っていきましょう。