株の利益にかかる税金とは?確定申告の方法を口座種類別に解説

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監修者 續 恵美子
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)
續 恵美子 (つづき・えみこ)
女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに。 夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。 生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

「株取引で発生した利益にも税金ってかかるの?」

「自分で損益を計算して確定申告するのはめんどうだな…」

株式投資で発生した利益には、税金がかかります。口座開設時の選択(一般口座/特定口座・源泉徴収あり/特定口座・源泉徴収なし)によって税金の申告方法や納税方法が異なるため、注意が必要です。

たとえば年収2000万円以下の会社員は、年間20万円以下の利益なら確定申告する必要がありません。そのため、口座の選択(源泉徴収の有無)で手元に残る金額に差が生まれます。年間で取得予定の利益が20万円以下の会社員は「源泉徴収なし」の口座を選べば、利益にかかる税金を支払なくてよいです。

この記事では株取引における税金の取り扱いとポイントのほか、損益通算や繰越控除、NISAの制度についても解説します。

  • 株で得た利益には税金がかかる
  • 会社員の場合、年間の利益が20万円を超えたときに申告・納税する必要がある
  • 源泉徴収ありの特定口座の場合は損益の計算と納税を証券会社が代行してくれる
  • 損失が発生したときは損益通算、繰越控除にて優遇措置を受けることができる

株の取引で発生する税金

株の取引で発生する税金はを行った際には、「譲渡益(売却益)」「配当益」の2つの利益にかかります。

利益にかかる税率と支払いタイミング

課税対象
(※申告分離課税の場合)
税率 確定申告
譲渡益(売却益) 20.315% 必要(特定口座・源泉徴収ありの場合不要)
配当金 20.315% 不要

株を売却したときに利益が出た場合は、「上場株式等の譲渡所得等」として20.315%が利益に対して課税されます。課税の内訳としては所得税が15.315%(うち復興特別所得税が0.315%)であり、住民税が5%です。

株を売って現金化したときの利益や配当金に対する税金は、以下のようなタイミングで税務署に納めます。

口座の種類 申告・納税のタイミング
一般口座 翌年に自分で申告・納税
特定口座(源泉徴収なし) 翌年に自分で申告・納税
特定口座(源泉徴収あり) 翌年に証券会社がまとめて納税

株取引における納税は、売買を行った翌年に行われます。源泉徴収のある特定口座では、取引で利益が出るたびに源泉徴収され、証券会社が1年分をまとめて納税する仕組みです。

5万円の売却益が出た場合

支払う税金=50,000円×20.315% = 10,157円(小数点切り捨て)

1日に複数売却し損した株・利益が出た株が有る場合、利益が出た銘柄のみ暫定で20.315%引かれますが、翌朝までには損失・利益を相殺してきっちりした額が反映されます。証券会社によっては「損益・税金履歴」といったページで確認することが可能です。

課税対象と期間

課税対象となるのは、あくまで株を売って現金化した利益に対するものであるため、売る前の帳簿上の利益(含み益)には課税されません。

また、税額を計算するときには利益から手数料などの経費を差し引くことができます。他の所得と分離して税金を計算し、確定申告によって税金を納めるため、この仕組みは「申告分離課税制度」と呼ばれているのです。

配当金に対しても、譲渡益と同様に20.315%の税金が課されます。基本的に源泉徴収によって課税されるため、確定申告は不要です。ただ、確定申告を行うときには「総合課税」もしくは「申告分離課税」が選択できます。

課税対象となる期間は、1月1日~12月31日までの1年間です。原則、翌年の2月16日から3月15日までに申告手続が必要です。税金の支払いの有無や支払う金額を確認するために、1年間の取引記録を手元の資料や証券会社から送られてくる資料でチェックしておきましょう。

株の税金が発生する場合の支払い方法

会社員が株の取引によって年間20万円を超える利益を得た場合、原則、確定申告をして所得税を支払わなければいけません。これは、株を売却した利益だけでなく、配当金も含みます。

また、株を一定期間保有したことによって「株主優待」を受け取っているときも課税されるのです。株主優待は税務上では雑所得として取り扱われるため、ほかの雑所得との合計が20万円を超えると申告の対象となります。

税金の払い方は、証券会社に持っている口座の種類によって手続きが異なります

口座の種類による納税手続きの違い

一般口座 特定口座
源泉徴収なし 源泉徴収あり
自身で年間の損益を計算して確定申告を行う。 証券会社が代行して損益の計算を行ってくれる。送付される「特定口座年間取引報告書」をもとに確定申告を行って納税する。 証券会社が代行して損益の計算、納税をしてくれるため、確定申告は不要

利益に応じて口座の種類を考える

口座開設の際、納税の方法が異なる3種類からひとつを選びます。

確定申告に必要な「損益の計算」を証券会社に任せたい方は、特定口座の2種類(源泉徴収あり/なし)から選ぶとよいでしょう。一般口座では、証券会社から取引に関する報告書が送付されないので、自ら損益計算したうえで、確定申告しなければいけません。

「源泉徴収なし」を検討するパターン

「利益が少なく、税負担をできるだけ抑えたい」会社員の方は特定口座の源泉徴収なしを検討しましょう。

「源泉徴収あり」を選んでいるときは、証券会社が納税まで代行して行ってくれるため、自身で確定申告をする手間が省けます。しかし、源泉徴収ありの場合だと利益計上のたびに税金分が控除され、会社員であれば申告不要な年20万円以下の利益にもそれぞれ課税されます。

申告不要な税金の発生を抑えたい場合は「源泉徴収なし」を選択しておきましょう。

自分で納税するときの手続き

確定申告書の用紙は、国税庁のホームページや各税務署の窓口で入手できます。申告書の作成のために手引書が配布されているので、それらを参考にしながら必要事項を記入して、各種証明書や本人確認書類を添付しましょう。書類の提出は窓口に持参するほかに、郵送でも受け付けてもらえます。

また、税務署には確定申告書作成コーナーが設けられているので、端末に表示される画面の案内にしたがって必要事項を入力していけば申告書を作成することも可能です。e-Tax(電子申告)を利用することで、そのまま申告を行えます。

ただし、株初心者がはじめてe-Taxで確定申告する場合「マイナンバーとICカードリーダライタ」を用意するか、税務署でID発行の手続きが必要です。

ほかの納税方法として、コンビニ納付・振替納税・クレジットカード納付・窓口納付などがあるので、都合の良い方法で納税しましょう。

利益額ごとの税金計算シミュレーション

1年間の利益額 所得税額
20万円以下 申告不要
25万円 25万円×20.315%=50,787円
30万円 30万円×20.315%=60,945円

※年末調整を受けている会社員等で、給与所得および退職所得以外の所得が20万円以下の場合。

年末調整を受けている会社員の方であれば、年間の利益を21万~25万円出すより、20万円以下に抑えたときのほうが、納税後に多くの金額が残ります。

また、「源泉徴収あり」の特定口座を選択していると、仮に年間利益が10万円だった場合にも自動的に納税されてしまいます。そのため年間の利益が20万円以下の会社員で源泉徴収による控除を避けたい方は「源泉徴収なし」の口座の選択を検討しましょう。

税金の支払い期限を過ぎたらどうなるのか

納税は期限までに行う必要があり、仮に払い忘れてしまった時には、法定納期限から1ヶ月以内に申告しましょう。申告が遅れた場合は「期間後申告」となり、本来かかる税金と別に「無申告加算税」が課されます

無申告加算税は、本来納付すべき税額に応じて15%、20%を乗じた金額です。ただし、期限から1ヶ月以内に期間後申告を行えば無申告加算税はかかりません。また期限後申告の場合、法定納期限の翌日から実際に税金を納めた日まで「延滞税」(最高で年14.6%)が発生します。

そのため、払い忘れや振替不能の場合には遅くとも1ヶ月以内に対応しましょう。

株の税金の支払いが不要なケース

続いて、株取引で利益が発生しても、税金の支払いが不要なケースの詳細を見ていきましょう。

1.会社員で利益が20万円以下だった場合

会社で年末調整を受けている会社員で、給与所得および退職所得以外の所得がない方を前提に、株などの取引によって得られた利益が20万円以下の場合には、申告義務がありません。

年間を通じて少額取引を続ける人であれば税金を大きく意識をする必要がありません。ただ、将来的に20万円以上の利益を得ていくことも想定して、申告方法や税金の計算も勉強しておきましょう。

3.損失が出ている場合

株の取引によって年間の収支がマイナスとなるときには、課税対象とはなりません。同様に、評価損(含み損)が発生しているときも納税の必要はありません。

納税は必要ありませんが、確定申告を行うことで「損益通算」「繰越控除」といった税制措置を受けることができます

損益通算 繰越控除
利益と損失を相殺すること。結果的に税額を減らすことができる。 当年分の損失を引ききれない場合に3年間損失を繰り越すことができる。

損益通算の手続きを行うと、仮に50万円の利益が出て、50万円の損失が発生している場合であれば、損益が相殺されるため税金がかかりません。特定口座(源泉徴収あり)で取引をする場合は、自動的に損益通算が行われることも知っておきましょう。

繰越控除は損失を3年間繰り越すことができる仕組みであり、翌年に利益が発生したとしても前年の損失を差し引くことができます。そのため、確定申告を行った次の年を含む3年間は税金の負担が軽減されるのです。

繰越控除を利用する場合は、源泉徴収ありの特定口座であっても確定申告をしておかないと、翌年以降繰越控除を利用できないため注意しておきましょう。

3.NISA口座を使っている場合

NISA(少額投資非課税制度)を利用している場合、年間120万円までの投資を非課税で運用できます。口座を開設してから、5年間で最大600万円の投資で出た利益はすべて非課税です。

NISAの注意点は、損失が出てしまった時にNISA口座と他の口座で損益通算が出来ないことと、最長3年間にわたって損失を繰り越すことができる「繰越控除」が適用されないことです。

NISAの詳しい説明はこちらの記事をチェック

この記事のまとめ

株式投資では利益に対して税金が発生しますが、損失が出たときにはきちんと税制措置を受ける方法もあります。

また、利用している証券口座の種類によって、確定申告の有無が変わってきますので、現在証券口座を持っている人は口座の種類の確認、これから開設する人は自分に合った口座の種類を選択することをおすすめします。

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