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決算書で業績予想するためのチェックポイント
投資を考えている企業の業績を調べる際は企業が決算日の後に出す「決算書」と呼ばれる書類を確認するのがよいでしょう。
上場企業であれば企業のホームページから確認することが出来ます。
この決算書は正式には「財務諸表」と呼ばれますが、財務諸表にはいくつかの種類があり、そこに記載されている数字から企業の業績を調べます。
▲引用:楽天証券決算短信(2019年12月期)
ここでは、財務諸表のうち、貸借対照表に記載されている数字から算出される「自己資本比率」や、損益計算書に記載されている「各種利益」の意味などについて学んでいきます。
少し難しく感じますが、本格的に投資を始めるためには知っていて損のない知識ばかりです。
一度に全部理解できなくても大丈夫ですので、少しずつ学んでいきましょう。
自己資本比率の判断基準
資本には返済の必要がない自己資本と、返済の義務がある他人資本があります。資本全額に対する自己資本の割合を自己資本比率といいます。
自己資本比率=自己資本÷総資本
自己資本比率は上記のような計算式で算出され
- 自己資本=資本金、資本準備金、利益剰余金などを足した「純資産合計」
- 総資本=「負債・資本合計」
の数字を用います。
一般的には自己資本比率は高い方が安全な企業という判断ができ、30%以上あることが望ましいとされています。
しかし、業種によって平均値は変わってくるため、業種に関係なく30%以上あるかという見方をするよりは、同業種内で比較した時に平均よりも高いかどうかをみる方がよいでしょう。
自己資本比率が高ければ必ずいい企業とは言い切れません。
成長するためには投資が必要になりますが、成長中の企業はどうしても投資や研究開発費にお金を使うため、既に安定成長期に入った企業に比べると自己資本比率が低くなる傾向にあります。
経常利益/営業利益が重要な理由
「年商〇〇億円」などと企業が紹介されることがありますね。
このときの金額は「売上高」を指していることがほとんどですが、企業の業績を見るとき株式投資においては売上高以上に利益が重要です。
利益にもいくつかの種類があり、売上高から原価や人件費、広告宣伝費などを差し引いた数字を「営業利益」といいます。
営業利益率=営業利益÷売上高
営業利益に受取利息や受取配当金などを足し、支払利息などを差し引いた数字を「経常利益」といいます。
営業利益と同じく、経常利益も絶対額だけではなく利益率も見るようにしましょう。
株価には売上高よりも利益額や利益率の方が大きな影響を与えます。
売り上げはコストをかければ簡単に増えるかもしれません。
しかし、いくら売り上げを増やしても利益は増えません。
効率的に利益を生み出している優良企業を見つけ出すには、売上高よりも利益に注目した方がいいのです。
たとえば、ある企業の売上高は10億円から倍増して20億円になっていたとします。
そして営業利益は前期は5億円だったのに対して今期は5億円だったとします。
数字だけを見てしまうと、営業利益が前期比で20%伸びており、好調のように感じます。
しかし、営業利益率をみると前期が50%だったのに対して、今期は30%に落ちています。
営業利益が増加していても、利益率が下がっているのであれば利益額の増額を必ずしもポジティブに評価できるわけではありません。
当期純利益が重要な理由
経常利益から一時的に発生した損益と法人税などの税金を差し引き、最終的に残った利益を「当期純利益」といいます。
この数字は財務諸表の損益計算書で、一番下に記載されている利益です。
1株あたりの利益(EPS)算出に使用するため、重要な数字です。
1株当たり利益(EPS)=当期純利益÷発行済み株式総数
ここで出てきたEPSで株価割ればPERが算出されます。
株価が割高か割安かを判断するPERがどのような計算式で算出されているかを知れば、当期純利益がどれほど重要な数字かを理解できるでしょう。
PERのことがもっと詳しくわかる記事
PER(ピー・イー・アール)とは?株の重要指標をわかりやすく解説
また、当期純利益として残ったお金は、翌期以降に新たな投資に使ったり、これまで借りていた借金の返済、株主への配当など、企業経営に重要な行動の原資になります。
このことからも、当期純利益の重要性は高いことがわかります。
損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の見方
企業の業績を調べるうえで重要な財務諸表にはいくつか種類があり、なかでも「損益計算書」、「貸借対照表」、「キャッシュフロー計算書」の3つが特に重要で、これらをまとめて財務三表ともいいます。
財務三表とは? | |
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損益計算書 | 企業の売上や利益 |
損益計算書 | 企業の資産や借金 |
損益計算書 | 企業の現金の動き |
それぞれの書類から何が読み取れるかを、より具体的に学びましょう。
損益計算書でわかることと簡単な見方
損益計算書は簡単にいえば企業の1年間の成績表のようなものです。
その年にどれだけの売上を稼いだのか、その売上を稼ぐためにどれだけのコスト(原材料や人件費)がかかって、売上からコストを引いて利益がどれだけ残ったのかということがわかります。
貸借対照表でわかることと簡単な見方
貸借対照表は簡単にいえば企業が創業してから決算日に至るまで、どのように資金を調達してどのような資産を保有しているかを記録した書類です。
貸借対照表は資産の部、負債の部、純資産の部と大きく3つに分かれます。
現預金や土地・建物など企業が抱える資産が、金融機関からの借入(負債)で取得したのか、それとも純資産(資本金や利益剰余金など)で賄っているのかなどを確認できます。
キャッシュフロー計算書でわかることと簡単な見方
キャッシュフロー計算書も3つに分けて考えられます。
営業活動によるキャッシュフロー | その企業が本業によってどれだけのキャッシュを生み出しているか |
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投資活動によるキャッシュフロー | 設備投資や事業に投資をしているかどうか |
財務活動によるキャッシュフロー | 企業が資金を調達したり、返済しているか |
営業活動によるキャッシュ―フローはマイナスの場合もありますが、必ずしも業績が悪いからマイナスというわけではなく、売掛金が現金化されていないなど、他の要因も考える必要があります。
投資活動によるキャッシュフローがマイナスになっている場合は、投資として固定資産を購入したなどの要因があり、プラスになっている場合は逆に固定資産などを売却してキャッシュを手に入れたということが分かります。
企業が活動するのに必要なお金を自社の売上から全てをまかなえるケースは少なく、ほとんどの企業が株式を発行してお金を調達したり、銀行から融資を受けたりしています。
調達額が返済額を上回っていれば、財務活動によるキャッシュフローの項目はプラスとなり、返済額が調達額を上回っていればマイナスになります。
決算書以外で業績予想をする方法
「財務諸表をいきなり分析するのは難しい」
「時系列で業績を一目で確認したい」
そんなときは『四季報』を活用してみましょう。
四季報には企業の概要や主要株主、これまでの資本政策、株価や業績の推移などが簡潔にまとまっています。
3,500以上ある上場企業の中からお宝銘柄を発掘するには手軽でよいでしょう。
株価指標の欄では、現在の株価と予想される利益から算出される予想PERが2年分記載されているため、その銘柄が割安かどうかを判断できます。
過去5年の業績推移のほか、今後2年先の業績予想も記載されているため、その企業がこれまでどのような業績を残してきて、今後はどのような業績を残すと予想されているかがわかります。
また、企業名の横には企業概要や特色が数行でまとめられており、その横の欄には注目すべきポイントが簡潔にまとめられています。
四季報にはオンライン版もあるので、スマホやPCなどで利用したい場合は有料登録しましょう。
▲引用:四季報オンライン
四季報を読んで、気になる銘柄があれば、財務諸表や決算説明会資料などもあわせて分析するのがよいでしょう。