株の長期保有で安定的に運用するための投資方法と銘柄選びを学ぼう

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「株を長期で持って利益出るの…?」

株には短期投資と長期投資の2種類がありますが、初心者の方には長期的に資産形成ができる長期投資が向いているといわれています。
この記事では長期投資の具体的な運用方法やメリット・デメリット、そして個別銘柄の選定方法をご紹介します。

株を長期保有するときの運用方法

長期投資には、代表的な投資手法が2種類存在します。

1つ目は、インデックス投資です。

インデックス投資とは

インデックスとは「株価指数」のこと。具体的には日経平均やニューヨーク・ダウ、S&P500などが該当し、これらの株価指数と連動する商品への投資をいう。

インデックス投資は個別株投資と比較して値動きが理解しやすいこと、長期的な値上がりを期待できることから、世界中で採用されている投資手法です。

2つ目は、ファンダメンタルズ分析による割安株への投資です。

ファンダメンタルズ分析とは

企業の財務や経理を分析し、株価と純資産や純利益の関係を表すPBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)等の指標を用いる分析のこと

ファンダメンタルズ分析を使うと、割安な株価で放置されている企業を探し出すことができ、他の投資家に先んじて投資することで株の値上がりを狙う投資ができます。

投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、この手法を採用していることで有名です。

なおPBR、PER等指標については、もっと詳しい記事がありますので参考にしてください。

また今回の記事では対象としていませんが、株式を保有した際に貰える配当金を狙った長期投資も存在します。

長期保有による利益はどのくらいか

代表的な2種類の長期投資手法を紹介しましたが、期待される利益はそれぞれの手法で大きく異なります。

インデックス投資は、株価指数と連動する商品への投資であるため、利益も株価指数と同程度となります。

例えばニューヨーク・ダウは、1916年から2016年までの期間で、名目上昇率が約5.5%となっています。
これは、100万円投資すると年間平均で5万円程度の利益を得られることになります。

今後も必ず同様のペースで成長し続けるわけではありませんが、過去の実績を踏まえると同程度のリターンは期待できるかもしれません。

一方、ファンダメンタル分析による割安株への投資は、インデックス投資と比較して大きな利益が狙えます。

上述のウォーレン・バフェット氏が運用する会社の株価は、1965年から2015年までの50年間で約2万倍になっています。
1965年当時に100万円投資していたら、50年間で約200億円もの利益を得ることになります。

身近な企業を例にすると、Amazonの株価は1997年の上場時は1.5ドルでした。
その後成長を続け、2020年2月の株価は2,100ドル、約1,400倍となっています。100万円投資すると、23年間で約14億円となる計算です。

利益の確定と損切りはいつすべきか

長期投資で難しい点が、どの程度の期間株を保有しいつ利益確定するべきかという判断です。

保有期間のイメージは、インデックス投資の場合は5年から10年、長ければ20年です。
対して割安株への投資は、短くて10年、長くて20年以上の投資期間になるでしょう。

利益確定のタイミングは投資家によってさまざまですが、基本的には現金への換金が必要となるまで株として保有し続けるのがよいでしょう。

長期投資の醍醐味は、投資期間に比例し株価が上昇を続けることです。
そのため、利益確定を目的とした売却が遅ければ遅いほど、運用成績が良くなる傾向にあります。

なお利益確定に際しては、株価急落に動揺して売却すべきではないという点に注意してください。

2008年のリーマンショック発生時にニューヨーク・ダウは大きく下落しましたが、5年後の2013年にはリーマンショック前の水準まで株価が回復し、その後は堅調に上昇しています。

株の短期売買では、株価が下落したら損が小さいうちに売却をする「損切り」と呼ばれる手法が存在しますが、長期投資では損切りは適切ではありません

長期投資では、株価が急落しても動じて売却せずに株価の回復を待ったほうが賢明です。

株を長期保有するメリット・デメリット

長期投資で見込める利益、また投資に要する期間を確認しました。
その他の観点として、長期投資にはいくつかのメリット、デメリットが存在します。
それらを包括的に考慮したうえで、自分にとって長期投資が向いているか、判断する必要があります。

長期投資のメリット

長期投資の最大のメリットは、インデックス投資も割安株投資のどちらも頻繁な取引が不要ということです。

株式投資を始めた初心者の頃は、「買った株をいつ売却すればよいのか」多くの方が悩みを抱きます。
長期投資では、株を購入した後は定期的に株価を確認する程度で売却せずに株価を保有し続けるのが基本です。

そのため頻繁な売却タイミングの取引判断が不要であり、取引のたびに発生する手数料を余計に支払わずに済みます。

インデックス投資はさらに、簡単に投資を始められることも大きなメリットです。

どの銘柄に投資するかの銘柄選定や投資タイミング等に悩まされることなく、すぐにでも取引できる点が魅力です。

長期投資のデメリット

一方で、長期投資にはデメリットも存在します。
一番の難点は、長い時間を要することです。

過去の株価推移や、これから世界経済が拡大していくことを踏まえれば、株価は長期的に上昇を続けるといえるでしょう。

ただし、それは数年単位あるいは数十年単位の話です。
短期的な投資で利益を出している投資家を横目に、じっくりと耐える忍耐力が長期投資家には求められます。

インデックス投資には、市場の指数に連動する性質上、大きな利益を狙えないというデメリットが存在します。

2019年のニューヨーク・ダウは、20%以上と大きく上昇しましたが、過去平均では約5%程度の上昇です。個別銘柄の上昇幅と比べると、その幅は小さいのです。

一方で、割安株への投資にもデメリットが存在します。
それは、企業分析に必要な知識を獲得するために、多くの勉強時間を要することです。

ファンダメンタルズ分析を実践するには経済、業界、財務等、広く深い知識が求められます。
株取引の初心者がすぐにそれら全てを把握することは難しいため、インターネット、新聞、本等を用いて、しっかりと体系的な知識を身につけたうえで、投資を開始することとなります。

長期保有目的の銘柄の選び方

では、長期保有を目的に投資を始める際、どのような銘柄を選べばよいのでしょうか。

長期保有に向いている銘柄の選定方法、および具体例を紹介していきます。

長期保有銘柄の選び方

インデックス投資の場合、株の選び方は非常にシンプルです。
証券会社のサイトの銘柄検索機能を使って、日経平均やニューヨーク・ダウ、S&P500に連動する銘柄を検索すればすぐに探し出せます。

日本経済全体に投資したければ日経平均に連動する銘柄、米国経済に期待するならS&P500連動銘柄という感じで直感的に選べます。

対して、長期的な値上がりを見込む割安株を見つけ出すには少し時間を要します。
最低限必要な要素として4つのポイントがあります。

  1. しっかりとした経営計画を掲げていること
  2. 強い競争力のサービスを保有、提供していること
  3. 同業他社と比べ株価が割安であること
  4. 割安で放置されている理由を分析し、今後解消される見込みがある銘柄を探し出すこと

長期投資に向いている銘柄一覧

銘柄選びのポイントを踏まえて、インデックス投資と割安株への投資それぞれに向いている銘柄をご紹介します。

まずはインデックス投資向きの銘柄2つですが、どちらもETF(上場投資信託)です。

ETFとは

株のように市場で売買可能な投資信託のこと。株の取引と同じ方法で、市場で売買が可能な金融商品。

銘柄名 特徴
DIA
(NYダウ連動ETF)
・ニューヨーク・ダウと連動している海外ETFのため今後も毎年平均5%程度の利益を期待できる
SPY
(S&P500連動ETF)
・ニューヨーク・ダウがアメリカの代表的な30銘柄から算出された指数であるのに対し、S&P 500は代表的な500銘柄から算出
・ニューヨーク・ダウ同様S&P 500も過去から上昇を続けている

自分にとってわかりやすい方、あるいは両方に投資してもよいでしょう。

続いて、割安株投資です。

銘柄名 特徴
キトー(6409) ・山梨県に本社を置く、荷物の運送、荷揚機の製造をメイン事業とするメーカー
・ノルウェー政府年金基金やゴールドマンサックスといった有名海外ファンドが株主となるなど好条件がそろいながらPERが9.29倍(2020年2月14日時点)と割安(機械業界の平均PERが18.9倍)

キトーは、日本・米国でも同業界内のトップシェアを誇り、好採算の高価格帯製品を販売しています。荷揚機の需要は高く、工場や土木現場、天然資源や航空産業など顧客は多岐に渡ります。

荷揚機は工場や建設現場、エンターテインメント領域等広い分野で使われるサポート機械です。日本を含む先進国の人口が減っていく中で、労働力不足を解消するため、サポート機械の需要は上がっていくでしょう。

銘柄名 特徴
大阪ソーダ(4046) ・業績好調で、2020年3月の営業利益は8期連続で過去最高を更新する見込み
・PERが9.82倍、PBRは0.96倍(2020年2月14日時点)と、株価が割安(化学業界の平均PERは18.3倍)

大阪ソーダは、航空機を作る際に必要となる炭素繊維の補強材である「アリエーテル」で世界シェア70%、自動車のエンジン周りで必要となる「エビクロルヒドリンゴム」で60%、電子部品や紫外線インク向け「タップ樹脂」は100%など、さまざまな化学製品で国内外の信頼を得ています。

銘柄名 特徴
ドキュサイン(DOCU) ・アメリカのナスダック市場に上場しており、電子署名サービスや取引先と結ぶ契約書、社内で承認が必要な書類を電子化するシステムで高い世界シェアを保持
・株価は直近5年で40ドルから80ドルと2倍

ドキュサインは、世界で180カ国以上、56万社以上のユーザーを抱え、グローバルかつニッチな産業のトップシェアを持っています。
また、印鑑を重視する日本にも進出しており、三井物産やオリンパスといった大手企業でも導入され始めています。

この記事のまとめ

投資はお金儲けではなく、経済成長の一端を担うことでその恩恵を受け、資産形成をしていくことです。
そのためには腰を据えて長期的な目で運用していくことが重要なのです。

インデックス投資やファンダメンタルズ分析で着実に資産形成していきましょう。

執筆者 堤國之助
ファイナンシャルプランナー
堤國之助 (つつみ・くにのすけ)
国内証券会社を経て、外資系コンサルティングファームに勤務。 並行して、独立FP(ファイナンシャルプランナー)として投資初心者に向けたコンサルティングを実施。

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