ドルコスト平均法とは何か
投資初心者が株や投資信託といった金融商品の購入に際して悩みとなるのが、「どのタイミングで買えばよいか」という点です。
その回答の一つとなるのが、ドルコスト平均法という投資手法です。
ドルコスト平均法は、金融商品を一度にまとめて購入するのではなく、定期的かつ継続的に一定金額ずつ購入する投資方法です。
決まった金額を購入することで、価格が高い時には購入数量が少なくなり、価格が安いときに大量に買うことになるので、結果的に平均購入単価を抑えることができます。
ドルコスト平均法のメリット・デメリット
では、ドルコスト平均法で実際に投資をする際のメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。
ドルコスト平均法のメリット
ドルコスト平均法のメリットは大きく2つあります。
1つ目は、高値で少量、安値で大量に株や投資信託を購入することで、平均単価を低く抑えられることです。
例えば、毎月30株ずつ購入するのと、毎月30,000円ずつ株を購入する場合の平均購入単価を比較します。
株価の推移 (1株あたりの価格) |
毎月30株ずつ買う場合 | 毎月30,000円ずつ買う場合 (ドルコスト平均法) |
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株数 | 購入額 | 株数 | 購入額 | |
1,000円 | 30株 | 30,000円 | 30株 | 30,000円 |
500円 | 30株 | 15,000円 | 60株 | 30,000円 |
1,200円 | 30株 | 36,000円 | 25株 | 30,000円 |
800円 | 30株 | 24,000円 | 37.5株 | 30,000円 |
1,500円 | 30株 | 45,000円 | 20株 | 30,000円 |
合計 | 150株 | 150,000円 | 172.5株 | 150,000円 |
平均購入単価 | 1,000円 | 約870円 |
株価が上記のように推移した場合、毎月30株を買う場合の平均購入単価は1,000円で、15万円で150株を購入したことになります。
一方、同じ条件で毎月30,000円ずつ購入するドルコスト平均法を実践した場合、平均購入単価は約870円で、15万円で172.5株購入することが可能です。
このように、ドルコスト平均法を実践したことで平均購入単価を下げたうえに、多くの株を購入することができるのです。
2つ目は、価格予想を必要とせずに金融商品を購入できる点です。
投資家は誰しも安く買って高く売りたいと考えています。
しかし、将来の価格を完全に予想するのは不可能です。
株であれば、今後株価が上下する情報を収集し、それら情報の真偽を吟味した上で価格を予想し購入有無を決断することとなります。
プロの投資家であれば、こうしたプロセスを踏まえて購入することも可能でしょうが、一般投資家がここまで検討するのは実際難しいでしょう。
この問題を解決する方法がドルコスト平均法です。
ドルコスト平均法で購入タイミング、購入金額を決めておけば、株価予想に時間を費やすことなく安定的な投資が可能となります。
時間や検討労力の削減という観点から、ドルコスト平均法は個人投資家にとって大きなメリットといえるでしょう。
ドルコスト平均法のデメリット
ドルコスト平均法も万能の投資手法ではなく、デメリットも2つあります。
1つ目は、購入の度に手数料が生じる点です。
ドルコスト平均法では、定期的に中長期間にわたって金融商品を購入することになります。
そのためドルコスト平均法を継続する限り、購入の度に手数料が発生します。
この際に購入時手数料が大きい商品は、毎回発生する手数料によって利益が圧迫されてしまうのです。
こうしたデメリットを踏まえ、ドルコスト平均法を実践する場合は、購入時の手数料が安いネット証券や、購入時手数料が不要な金融商品を選択しましょう。
2つ目は中長期的な値下がりに対応できない点です。
ドルコスト平均法は、あくまでも購入単価を平準化する仕組みにすぎません。
価格が変動しながらも価格上昇局面であれば利益が期待できますが、下落局面では購入数は増えるものの価格が上昇しなければ、結果的には損失が増加する結果となってしまいます。
ドルコスト平均法を実践する際には、中長期的に値上がりが期待できる商品を選択することがポイントです。
ドルコスト平均法の利用方法
ドルコスト平均法は、中長期投資と相性が良い投資手法です。
そのため、対象商品としては中長期での上昇が期待できるNYダウやS&P500等に連動するETF(上場投資信託)が向いているでしょう。
NYダウやS&P500というのは、アメリカを代表する指標で、日本における日経平均のような感じです。
NYダウ・S&P500とは
NYダウは、アメリカの工業株30銘柄で算出した株価指数のこと。
S&P500は幅広い業界の株500銘柄で算出した指数で、アメリカの株式市場全体の動向を表す。
このNYダウ・S&P500は、中長期的に上昇を続けています。
理由は多数ありますが、アメリカ、およびアメリカ企業が顧客としている世界の人口は増加を続けており、その結果経済・消費が拡大し、株価に反映されていることが大きな理由です。
▲NYダウの10年間の株価推移(出典:Yahoo!ファイナンス)
そして、この人口増加・経済拡大傾向はこの先数十年も続く見込みです。
これらの要素から、NYダウやS&P500は中長期で上昇を続ける可能性が高いといえます。
ドルコスト平均法は平均購入単価を下げる効果があるため、中長期的に上昇するNYダウ、S&P500を低い平均単価で購入することにより、差額である利益を大きくできるのです
このことから、ドルコスト平均法は中長期で値上がりが見込まれるNYダウ、S&P500投資に適しているといえるのです。
国内の税制度の中では、つみたてNISA・iDeCoがドルコスト平均法と相性が良い制度です。
この制度は、日本政府が国民に中長期投資による資産形成を進めてほしいという狙いで作り出された税制優遇制度です。
これらの口座で購入した金融商品は利益が非課税となる税優遇を受けられるため、効率的な資産運用の手助けとなります。
さらにつみたてNISAは最大20年間、iDeCoは60歳まで運用が可能です。
中長期投資は最終的な運用額、運用益が大きくなるため、小口の投資と比べると得られる税優遇効果も大きなものとなります。
なお、つみたてNISA、iDeCoはそれぞれ投資可能商品が限定されているため、投資を始める前に自分が検討している商品が選択可能か必ず確認してください。